ツンデレ社長と小心者のあたしと……2
服を直すふりをしてそっとその部分に触れた。
と同時に、社長とのあの夜の事が思い出されていく。
あたしの服を脱がせ、唇が首筋を這った時、思わず、
「いや……」
と小さく声を漏らしてしまった。
そんなあたしを面白そうに見ると、社長は意地悪な笑みを浮かべて聞いたっけ。
「何で?」
「何でって……」
何で?と聞かれても、あたしは答えなど持ち合わせていなかった。
前からずっと憧れていた社長に触れられて、口付けられていて……。
それを断る術は無く……ただ、キスマークが付く事を恐れただけなのだけど、そんな事全てお見通しだったんだと思う。
あたしの小さな抵抗を楽しむように、跡がつくかつかないかの絶妙なタッチで社長はキスを何度も繰り返した。
こうなってしまってはもう逆らえず……されるがままに身を預けたあたしを社長は満足げに見る。
そういう理由で、今日のあたしは春先だというのにタートルネックのセーターを着る羽目になったのだ。
「そうやって隠せるんだから、別に問題なかったよね?」
もしこの場に社長がいて、あたしの心の中を読んだとしたら、きっとあっさりとこんな事を言ってのけるんだろう。