ツンデレ社長と小心者のあたしと……2
放送を最後まで見終わり、外に出ようと立ち上がると、社内には半分も人は残っていない様だった。
そもそも、事業規模の割に少数精鋭の会社である。
有能な人材は引き抜き、出来ない社員に遠慮は無い。
どうしてあたしがここにいられるのか不思議になる事もあるけれど、できる事を必死にやって食らいつくしかないのだ。
今でもはっきりと覚えている。それは最終の個別面接時のこと。
「何が出来るの?」
社長がそっけなく、あたしに聞いた。
圧倒的なオーラの前で、成す術のない口ベタな自分。
言いたいことを上手にアピールするのが苦手で、だからこそ履歴書に力を入れた。
あたしの事を全部分かってもらおうと、相当な文字数を書き込んだと思う。
だけど……。
そんな渾身の履歴書を、社長は目の前であっさり破り捨てたのだ。
「何がしたいの?」
社長はもう一度聞いた。
絶対絶命。
「……あの、私社長の本を全部読みました。それで、どんな事にでもチャレンジする姿が凄いって思いました。だから……社長になれない事は分かってるんですけど、小さな社長っていうか、いえ違うんです。あたしが社長になるんじゃなくて、社長みたいに何でもやってみることが出来る人間になりたいと思ったんです……」
必死になり過ぎて、今でも曖昧だけれどだぶんこんな感じの、ぐだぐだな返事をしたと思う。
肝心の履歴書に目を通して貰えなかったショック。
そして、突然のぶしつけな質問。
……今でこそ、そういう人だと分かってはいるけれど、当時のあたしにとってそれは、どんなに怖いお化け屋敷よりも怖い恐怖体験でしかない。
拳を握りしめ、震える私に社長は優しかった。
「そう、俺のやり方知ってるなら話が早くていいや、じゃよろしく」
「…………」
「ぼーっとしてる時間無いよ?明日から来て。分かったら準備に帰る!」
「は、はいっ!」
それが、あたしと社長との最初の出会い。