ツンデレ社長と小心者のあたしと……2
「何がですか?」
「だって、顔に嫉妬って書いてあるもん」
「そ、それは……」
仕事の付き合いに、いちいち嫉妬なんかしていたら始まらない。
そのつもりでいたけれど、さすがにこの間の今日。
さらにアイドルとの対談の為にマウスウォッシュを運ばされていた……という事実は少なからず心に影響を与えていたのかもしれない。
「単純過ぎて、逆に面白くなってきた」
その目は、いたずらを思いついた子供みたいな目。
くすっと笑うと、あたしを捉えて離さない。
社長は、マウスウォッシュをキャップに少し移すととそのまま口に含む。
そして……そのままあたしを抱き寄せるとキスをした。
それも軽いキスじゃない。
深い……深いキスと共に、社長の香りが口の中に流れ込んでくる。
混ぜ合わせるような舌遣いに、あたしはもう溶けてしまいそうで……立っているのが精一杯。
体は硬直させているわたしと、それすらを楽しむように首筋をくすぐる社長。
それは至福の5分間。
「じゃ、そろそろ行ってくるわ」
去っていく後ろ姿を見ながら、ふと考える。
磯野まりかと対面させなかったのは社長の優しさ?
なんて……そんな訳ない。
そんな気遣いをする人じゃない。
ただ、あたしの気持ちを知った上で。
それでも好きだという気持ちを止められない、馬鹿なあたしのことをおもちゃにしてるだけ。
分かっているのに……。
「分かってるんだけどな……」
気持ちがぽつりと言葉に出た。
分かっているけど……やっぱりこの想いは封印出来そうにない。
【END】