記念すべき、100回目のキス

「だって、怖いの。
ねえ、アキは私とのキス全部覚えてる?」


1回目はもちろん、7回目だって、11回目だって覚えてる。


でも・・・・・・。


「19回目は?25回目は?
覚えてないでしょ?
私だって、もう今日したのが何回目かもわからない」


アキは黙って焦点の合わない目で、私を見ていた。


「そうやって、進んでも、
きっと同じじゃないかな?
最初のころはキスと同じで、
ドキドキしたりして・・・・・・。
でも、いつかは今みたいに、
肌を重ねることだって、
ただの当たり前で普通の行為に
なっちゃうんじゃないの?」


何も言ってくれないアキ。


なんか言ってよ、と肩を叩きたくなる。


終わりなのかな?


こんな風に終わっちゃうのかな?



「ごめん」


ただそれだけを言い残して、私はアキの家を出た。



外は雨が降っていた。


私が悪いのか、
それともそんな風にしてしまった、
私たちが悪いのか。


涙も出ない。


私はひどい女だ。


君が好きだ。


だけど、私はそんなことがしたいわけじゃないの。


ただのわがままかもしれないけど。


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