運命を画策した堕天使
Ⅰ
いつの時代も私はいらないモノだった。
美しい姉と比較されて、みじめに生きていた。
それは遠い記憶で、いつの時代だったか覚えていない。
商人に売られようとしていた私を一人の青年が止めたのだ。
「待て、」
「は?なんですか?」
「この少女は私が買おう、」
青年の言葉に、商人だけでなく両親も驚いた。
「しかし旦那、この娘は私が、」
「いくらだ?」
「え?」
商人が手元にある帳簿を見せると、青年はニヤリと笑った。
「私はその倍の金額を払おう。」
そして私は青年に買われた。
―――
また、ある時代、
綺麗な姉は、金持ちの息子に見初められて、嫁いでいった。
その支度金はたいそうな額で、両親は喜んで姉を褒め称えた。
そして私を見て言うのだ。
「同じ姉妹で、どうしてこうも違うの?」
「お前みたいな出来損ないは誰も嫁にもらってくれないだろう、家の迷惑になりたくなければ一生懸命働くんだな。」
朝から晩まで働いて、頑張っているつもりだった・・・
両親が豊かに暮らせるように、
姉のように褒めてもらえるように、
けど、努力は報われることなくて、
「明日から、お前はここに行くんだ。」
「え?」
「行き遅れたお前をいつまでも養うほど、ウチは裕福じゃないんだよ!」
勝手に嫁ぎ先を決められていた。
行き遅れの私を引き取ってくれるのだから、ありがたいと思え!なんて言われて、
その夜、泣きながら荷物をまとめた。
次の日の朝、小さな荷物を持って家を出た私に声をかける人がいた。
「どこに行くの?」
「え?あ、あの、」
顔を上げれば、ニッコリと微笑む青年が立っている。
彼に行く先を告げれば、眉間にシワを寄せた。
「あそこの旦那さんは好色家で有名なんだよ?」
「でも、私はもうこんな歳で、・・・誰も嫁には、」
そこまで言って俯くと、彼が私の頭をポンポンと叩いた。
「うん、大丈夫だよ。俺のお嫁さんになれば良い。」
「え?」
「おいで、」
差し伸べられた手の平、
私はその手をそっと握った。
―――
どの時代に生まれ代わっても、私を窮地から救い出してくれる青年。
愛しい、と思ったのはいつの頃だろう。
けど、ある時代で気付いてしまったのだ、
彼が私の姉を切なそうに見つめているのを、
やっぱり、みんなが好きになるのは姉なんだ。
こんな出来損ないの私じゃない、
きっと彼は姉に感謝されたくて、姉と繋がりたくて私を助けたんだ・・・
そう気付いて、私は目を閉じた。
この想いを胸に秘めて、