その指先も仕草もすべて
今日に限って、定時前に急ぎの仕事が立て続けに舞い込んできた。
どうしても残業しなければならなくなり、彼女に連絡を入れようとして、携帯を自宅に忘れてきたことに気づいた。
会社の電話から彼女の携帯にかけようかと思ったけれど、記憶している番号が曖昧で確かじゃない。
結局彼女に連絡を取れないままに、既にもう待ち合わせを2時間以上遅刻している。
待ち合わせ場所は、駅前の広場の時計塔の下。
目印になりやすいその場所を待ち合わせ場所に使う人も多い。
急ぎ足でようやくそこに辿り着いた俺は、彼女の姿を必死に探した。
でも降り出した雪のせいで、そこには彼女はもちろん、他に待ち合わせをする人の姿もない。
やっぱり、帰ってるよな。
待ち合わせを2時間以上も過ぎて何の連絡も寄越さないやつのことを、雪が降っている中で待てるはずない。