Sweet*Princess
「ねぇ、姫ちゃん?」
放心状態の私に、雅斗さんは少し微笑んで悪魔のような言葉を発した。
「壱斗ってさ…あぁ見えて結構独占欲強いでしょ?」
……そういえば、自分でもそんなこと言ってたな……
「他の男にキスされたって聞いたらどう思うかな?しかも、“兄”である、俺に」
どうして、“兄”を強調したんだろ……?
て、それどころじゃない!!
もしバレたら、壱斗に捨てられる……?
や、やだ!そんなの絶対やだ!!
「そんなに焦らなくても言わないよ……君が壱斗や他の家族に俺の秘密を言わなかったら……ね?」
結局、それが目的で……
「隠せるよね……?」
それは、“はい”としか言い様のない質問で。
私を信じてくれる壱斗に隠し事をするってことを、自ら認めざるを得なかった。
「…はい……」
「ありがとう。二人だけの、秘密ね……?」
そう言って、目の前の悪魔は微笑んだ。
壱斗に隠し事するってことにいっぱいいっぱいだった私は違和感に気付かなかったんだ。
雅斗さんが強調した“兄”という言葉。
まさかそれが二人の仲を揺るがすほど大きい、壱斗の心の傷だということに
私はまだ気付いていなかったんだ……
*