Sweet*Princess
“お母さん、どこ行くの?”
“壱斗…大丈夫よ、すぐに戻ってくるわ”
すぐってどれくらい?
ぼくはまた、ひとりでねなくちゃいけないの?
“ねぇ、やだよ…ひとりでねるのこわいよ。いかないで…”
“壱斗、わがまま言わないで。壱斗はいい子でしょう?”
どうして雅斗お兄ちゃんと史斗お兄ちゃんだけなの?
どうしてぼくは
いつもひとりなの─……?
「うぁ!……ハァ…あぁ…」
夢、か………
どんな夢、見てんだよ。
自嘲ぎみに乾いた笑いを洩らす。
ふと、隣で寝ていた姫乃が俺のTシャツの裾を握った。
……起こしたかな?
って、少し焦ったけれど、姫乃は気持ちよさそうに目を瞑ったままだった。
幸せそうな寝顔は
今は俺の心をかき乱すだけ。
雅兄と、何してた?
なんで雅兄の手を握ってた?
雅兄は、
どうしてあんな瞳で姫乃を見つめていた?
*