Sweet*Princess
それから
明斗くんに頭を撫でられて、なんとか泣き止んだ。
頭の中がすっきりして、自分の気持ちもはっきりわかる。
明斗くんと手を繋いで家に帰ると、玄関に座り込む壱斗がいた。
「姫乃!と、明斗?」
「壱斗お兄ちゃん、ただいま。姫乃、きょうはありがとな」
「ううん、こちらこそ。ちゃんと陽菜ちゃんに渡すんだよ?」
「…うん」
明斗くんは、顔を真っ赤にしながらしっかり頷いた。
うまくいくといいなぁ……
「姫乃」
「あ、壱斗。ただいま」
「……心配した」
ギュッて抱き締められて、壱斗の顔が私の首元に埋められる。
愛しい……
「まだ5時だよ?」
「うん……でも、家に帰って姫乃がいないと…不安になるんだ」
“ごめんな、弱くて…”
と、呟いた壱斗はまた寂しそうな顔。
わかってたはずなのに。
壱斗のこの顔は“俺を愛して”って言ってるんだ、って知ってたはずなのに。
この時ギュッて、壱斗を抱き締めたはずなのに。
私はどこで壱斗を見失ってしまったんだろう。
失う予感は、この時からずっと胸にあった。
*