Sweet*Princess



壱斗の声が耳に響く


大好きな声のはずなのに


今は世界で一番残酷な声。



「姫乃を好きなはずなのに…、咲華さんのことになると今でも胸が震える」


ねぇ、壱斗


それは『咲華さんを今でも愛してる』って言ってるようなものだよ?



だって、私の胸も壱斗のことになると震えるの



……私の、片想いなの?



「それなら、俺は…」


雅斗さんの言葉が途切れる


正確には聞こえなくなった……かな



史斗さんの腕に、私の耳が塞がれたから


初めて聞く、史斗さんの心音


それはとても近くで聞こえて。



頭が混乱する


冗談かも知れないけれど、初めて知った雅斗さんの気持ち


ずっと信じてた、壱斗の気持ちが私に向いていないこと



今まで過ごした壱斗との日々が


壱斗との思い出が


すべて崩れていくような気がした。



「……もう聞くな」


「史、斗さん…ッ」


「俺がいる。俺がお前の傍にいてやるから…」


「うっ…うぇ…」



ごめんね、壱斗。


私もうわかんないよ……



*
< 181 / 231 >

この作品をシェア

pagetop