Sweet*Princess
「姫乃ー、行くよ!」
「あ、はぁい」
あのキャンプから帰ってきて3日。
私は今まで通りの生活を送っていた。
壱斗の本当の気持ちに、気付かないフリをして。
「髪、乱れてるよ」
そう優しく笑って壱斗は私の髪を梳いた。
ズキン……
平気なフリをしていても、壱斗に優しくされると心は痛んだ。
……好きだと、実感してしまうから。
「ありがと」
胸の痛みを我慢して笑ったら、壱斗は少し悲しそうな顔をした。
もう、ダメなのかな、私たち。
そんなに悲しそうな顔をさせているのが私なら、ダメなのかも知れないね。
でも、嫌なんだよ。
わがままかも知れないけれど、あなたの傍にいたいの。
あなたの元に戻った時に、私はそう決意したから。
大好きなの。
「……あ」
リビングの前に立っていた私たちのそばに、史斗さんが来た。
「おはよ、史兄」
「……あぁ」
壱斗に返事すると、史斗さんは私を見た。
「……あ、あの…」
「姫乃もおはよう」
優しい笑顔。
未だに史斗さんの顔を見るのは恥ずかしい。
だって、あの日……
*