Sweet*Princess

3*愛した人




『壱斗を好きでいるのが苦しい』


彼女の言葉が、涙が


頭を掠めてまた胸が痛くなる。



俺ならあんな顔させないのに……


ありきたりな言葉だけれど、ほんとにそう思うんだ。




だから俺にはしなければならないことがある。


そう、アノ人に……










「雅さん、どこ行ってたんすか!」


店に戻ると、後輩が声をかけてきた。


仕事中に急に消えたんだもんな…


そりゃぁ、焦るよ。


悪いことしたな



「ごめん」


そう微笑むと、ソイツは顔を赤くした。


この笑顔も。男も赤面してしまうほどの笑顔も


彼女が教えてくれたんだ。




話しかけてくる咲華や他の客を無視して俺が向かったところ。


そう、今の俺を作ってくれた彼女の元。




「……涼子さん」


「雅斗」



俺は、この笑顔が大好きだった。


そう、俺が愛した人




「涼子さん、話があるんだ」


彼女の前に跪いて、手を取りキスをする。


……綺麗な手


姫乃の手はもっと小さくて、プヨプヨしてたっけ。


そんなことを思い出して、少しだけ笑みがこぼれた。



「…俺、もう涼子さんに会えないよ」


彼女を見上げると、俺の頬を撫でて微笑んだ。



「そんなに悲しい顔しないで」


ねぇ、涼子さん。


あなたはほんとに



いい女だったよ。




*
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