Sweet*Princess



「夫、って……?」


涼子さんの、だよな…?



「愛してなんか、ないのに…!」


この時気付いたんだ

涼子さんは弱い人なんだと

傷を、持った人なんだと



確かに傷ついたよ。


恋人だと思ってた人に、『夫』がいたんだから。


でも、



「雅斗が好きなのに……!」



お互いに事情があることは知ってる。


お互いにプレッシャーを背負っていることは知ってる。



俺は涼子さんを抱き締めた。


「旦那さんがどうかしたの?」


背中を撫でながら、優しく尋ねる。


涼子さんは嗚咽を洩らしながら、小さな声で答えた。



「愛人、連れてきたの……っ、しかもその女、桐生の財産を狙ってるだけでッ、私をいじめて家から追い出そうとするの……」


「そっか、寂しい思いしたんだね…」



って、ちょっと待って…



「今桐生、って言った…?」



桐生って、まさか……

嘘だろ?



「そうよ…桐生の現会長は、……私の夫よ」


「………っ」



抱き締めていた手を離して、後退りした。


だって桐生って……うちの永遠のライバルで…


俺は今まで、両親を裏切ってた……?



*
< 196 / 231 >

この作品をシェア

pagetop