Sweet*Princess
「夫、って……?」
涼子さんの、だよな…?
「愛してなんか、ないのに…!」
この時気付いたんだ
涼子さんは弱い人なんだと
傷を、持った人なんだと
確かに傷ついたよ。
恋人だと思ってた人に、『夫』がいたんだから。
でも、
「雅斗が好きなのに……!」
お互いに事情があることは知ってる。
お互いにプレッシャーを背負っていることは知ってる。
俺は涼子さんを抱き締めた。
「旦那さんがどうかしたの?」
背中を撫でながら、優しく尋ねる。
涼子さんは嗚咽を洩らしながら、小さな声で答えた。
「愛人、連れてきたの……っ、しかもその女、桐生の財産を狙ってるだけでッ、私をいじめて家から追い出そうとするの……」
「そっか、寂しい思いしたんだね…」
って、ちょっと待って…
「今桐生、って言った…?」
桐生って、まさか……
嘘だろ?
「そうよ…桐生の現会長は、……私の夫よ」
「………っ」
抱き締めていた手を離して、後退りした。
だって桐生って……うちの永遠のライバルで…
俺は今まで、両親を裏切ってた……?
*