Sweet*Princess



「うぇ……う…あぁ…」


泣き続ける私の背中を、史斗さんの温かい手が撫でる。



もう振られてしまったというのに


私の頭の中では、壱斗との幸せな日々が繰り返し流れていた。



優しい手も


強い瞳も


逞しい腕も


広い背中も


低くて甘い声も


お風呂上がりのシャンプーの匂いも


もう、私の傍にはないのに……




「どうしたら……、忘れられますかね…」


無理矢理笑顔を作って史斗さんを見ると、史斗さんは困った顔をした。



「無理に忘れなくていいよ……俺も雅斗もいるし。辛かったら傍にいてあげるから」



その声が優しすぎて……、また私は泣き出してしまった。


微かに足音がして、私は抱き抱えられて雅斗さんの車に乗せられた。


「しばらく、俺の部屋で生活しよう」


他に帰るところはない。


だってもう、壱斗の部屋に私の居場所はないのだから……



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