Sweet*Princess
雅斗さんの部屋に着くと、私はまた抱き抱えられて寝室に連れて行かれた。
そしてベッドの端に座らされて、その前に雅斗さんがしゃがむ。
「姫ちゃん」
また涙が一粒流れた。
雅斗さんはその涙を拭って言葉を紡ぐ。
「俺と……結婚して」
「………っ」
あまりにも予想外な言葉に正直驚いた。
好きだとは言われていたけど、結婚って…急すぎるよ……
「いきなり言っても、無理だよな?だからまず…俺を見てよ。アイツを忘れろなんて言わないから、俺を見る努力をしてみてほしい」
それでも無理なら……、雅斗さんはそこまで言って口を閉じた。
「壱斗はさ……」
雅斗さんは泣きそうな顔で話し始めた。
「ずっと、両親に愛されてないと思ってたんだ」
「え………?」
あんな、あんな優しそうなご両親が……
あんなに優しく壱斗を見つめるご両親が壱斗を愛してないわけないよ……。
「俺らが小さい頃はさ、今の親父からは想像できないくらい厳しい父親でさ、俺は次期会長だし、史斗は俺を支える立場になるわけだし……なにか大きな会議とかには必ず俺と史斗を連れて行ってたんだ。いつかお前らがこういう場でトップに立つんだぞってことを見せるために」
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