Sweet*Princess
────放課後
美帆に軽く挨拶すると、私は走って教室を出た。
壱斗にも美和さんにも、咲華さんにも会わないようにしなくちゃ……
必死で麻生家まで走る。
この道を……、壱斗と二人手を繋いで歩いた
きっともう、この道を通ることはないんだろうな
そう思うとゆっくり景色を見ながら帰りたかったけど、時間がない。
少し止まって涙を拭うと、私はまた走り出した。
見慣れたドア。
もうこのドアも開けることはないだろう。
恐る恐るドアを開け、誰もいないことを確認すると、私は急いで自分の荷物を整理し出した。
あの頃とは、まったく違う匂いがする。
よく見ると、お香を薫いた後があった。
……美和さんの、趣味かな。
この部屋には至るところに美和さんのものがある。
ほんとにここで暮らしてるんだ。
私と壱斗が愛を育んだこの部屋で、一緒に。
荷物をまとめ終わると、勢いよく立ち上がる。
もうここに来ることはない。
壱斗が使っている机に手を置き、小さく呟いた。
「……さよなら」
たくさんの思い出と、愛しい人に。
*