Sweet*Princess
荷物は少し重いし、帰り方もわからない。
雅斗さんに電話しようと携帯を取り出す。
そして、出て行こうと振り向いた、瞬間
「……っ」
ドアにもたれる彼は、私を無表情で見つめていた。
「あ、えっと……」
まず
勝手に部屋に入ったことを謝らなきゃだよね。
「あの、勝手に部屋入っちゃって、ごめんなさい!荷物を、取りに来て……」
彼は何も言わない。
私は怖くて、彼の顔を見ることができなかった。
……別に
話すことなんて何もないもんね。
とりあえず、謝ったから……帰ろう。
「じゃ、失礼します」
足早に歩く。
もう、この空間にいるのが辛かった。
彼の隣を過ぎようとした時
それはまた、一瞬で
わかることは今
愛しい彼の匂いに包まれていることだけだった。
「……っ」
荷物は肩からずり落ちて、携帯は彼に奪われていた。
「雅兄に、電話?」
雅斗さんに電話をかけようと、アドレス帳の雅斗さんのところを開いていた。
彼はそれを見ると、私の目の前でそのページを閉じた。
*