Sweet*Princess
Side美帆
「斎藤さん?」
「あぁ、あなたは姫乃様のお友達の……」
「山内美帆です」
「こんな遅くまでどうしたんですか?」
「塾です。斎藤さんは?」
「僕は勤務を終えて帰るところです」
夜のコンビニ。
塾の帰りに立ち寄ると、恋焦がれた大きな背中。
自分でも驚くほど冷静に、声をかけていた。
「こんな時間まで…、危ないですね」
今までこの時間でも怖いと思ったことはなかった。
あの日からだ。
斎藤さんに、助けてもらった日。
あの日から怖くなった。
元から男というものに嫌悪感を抱いていた私が、更に男を嫌いになった。
………ただ一人を除いて。
「お送りします」
ねぇ、斎藤さん。
それは姫乃の友達だから?
私はもっと、ただ純粋にあなたといたいよー……
「寒いですね」
「そうですね」
車の中では、姫乃がいたから会話があったのだと、改めて実感する。
でも、沈黙が嫌じゃない。
私、相当この人が好きなんだ。
「ここじゃないんですか?」
車から下ろしてもらった家に来て、斎藤さんは立ち止まる。
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