Sweet*Princess
私達の乗る車に気付いて、美帆は走り寄る。
私はずっと二人を交互に見ていたのだけれど
不自然に逸らされる瞳に疑問を感じずにはいられなかったんだ。
「おはよ、姫乃!」
「あ、うん!おはよ!」
「おはよう、美帆ちゃん。乗りなよ」
「壱斗先輩、おはようございます!じゃ、失礼しまーす…」
美帆は、斎藤さんに一番近い位置に乗った。
この前はあんなに緊張していたのに、今は緊張しているどころか斎藤さんのほうを見ようともしない。
「……おはようございます、斎藤さん」
「……おはようございます」
機械的に交わされたかのような挨拶は、戸惑いと冷たさを含んだものだった。
「姫乃、元気出せ。姫乃が元気ないとみんな暗くなる」
二人に聞こえないように、壱斗は私に優しく言った。
……もしかして、壱斗も二人の異変に気付いてる?
そっか、そうだよね。
私達が笑ってなきゃほんとに暗くなっちゃうよね。
二人の間に何があったとしても、私達は二人を勇気づける立場でいないといけない。
「美帆、遊園地行ったらまず何乗る?!」
「え、あ…うーんとね……」
ありがとね、壱斗。
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