Sweet*Princess


佐藤さんと一緒に観たのは、今流行りの恋愛映画。


平日にも関わらず映画館はとても混んでいたけど、幸運にも6時前に映画が終わる時間に入れた。





出てきた俳優さんが壱斗とかぶる。


そう言えば、友達が似てるって騒いでたな。


この映画、選ばなければよかった。




「ひっく……うぇ…」


「え?姫乃ちゃん、泣いてる?」



そんなに感動する?!って苦笑いしてる佐藤さん。




わかんないよ。


だって、内容理解してないんだもん。


なんで壱斗に似てるんだよ、バカ…

なんて俳優さんに毒づいてみても、胸の痛みは消えるどころか強くなった。




「出よっか…姫乃ちゃん、大丈夫?」


いつの間にかエンドロールに差し掛かっていて、立ち上がる人々に周りは騒がしくなっていた。



「ごめんなさい、佐藤さん…」


「いいって。姫乃ちゃんは純粋で可愛いな?」



はにかんで笑う佐藤さんに、また胸の痛みが増した。




「ちょっと、トイレ行ってきます!ちゃんと復活してくるんで!ごめんなさい!」



泣き顔を隠すためのメイクには慣れた。



学校を出る時にしたのと同じようにメイクを施すと、誰も泣いてたことになんて気付かないだろう。



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