Sweet*Princess
「お待たせしましたッ」
「え、あ…すげ…女の子ってすごいよな」
いつまでも驚き呆れた様な顔をする佐藤さんに、胸の痛みを隠して笑った。
映画館を出ると、まだ明るい空に月が浮かんでいる。
中途半端に浮かぶ月に、自分自身を重ねた。
「姫乃ちゃんどうする?ご飯食べる?」
「あ、私…帰ります」
「そっか…お家厳しいんだね…」
「アハ、ハ…」
引きつった笑いを浮かべた時、一点を見つめたまま動けなくなってしまった。
「姫、乃……?」
そんなに傷付いた顔しないで…
心が、手が、足が震える。
「姫乃ちゃん、知り合い?」
俯いたままただ唇を噛み締めた。
私の頭を占めるのは、さっきの壱斗の傷付いた顔と“ごめん”って言葉。
近付いてきた壱斗は私の目の前で立ち止まった。
「映画観てたの?」
優しさを含んだ声。
壱斗は、こんな私も許そうとしてるのー……?
「あの……、」
「あ、俺は………姫乃の兄です」
心臓が、凍り付いた。
*