Sweet*Princess
3*別れ
弾かれたように顔を上げれば、いつもと同じように微笑む壱斗。
「あ、そうなんですか…俺、姫乃さんの友達の佐藤です」
佐藤さんの声が、遠くで響く。
「前、言ってた人か…」
壱斗の呟きは小さいのに、深く胸に染み入った。
「じゃぁ…、俺帰るから。また遊ぼうね」
去って行く佐藤さんに曖昧に微笑んだ。
「俺達も帰ろっか」
いつまでも優しい壱斗に、胸に穴が開いてしまったかのように苦しかった。
並んで歩くと遠くなってしまった距離に、二人の心の距離も遠くなったと、実感せずにはいられない。
「壱斗……」
「ん?」
「私、家に帰るね……」
「やだ…………って言っても?」
「………ごめんなさい……」
「そっか。……幸せになって…」
頭に乗せられた手は、あまりに優しく、あまりに悲しい。
「壱、斗も…」
「うん、ありがと」
壱斗は額にキスをくれた。
堪えていた涙が、頬を流れ落ちた。
壱斗が離れる。
額に温もりを残して。
去って行く大きな背中を見ていられなくて、ギュッと目をつぶった。
壱斗……
ごめんなさい……
ありがとう……
*