Sweet*Princess


「ただ…いま…」



久しぶりに開けた我が家の扉。



麻生家の頑丈で大きすぎるドアに比べたらすごく小さい。


でも、ここに私の幸せがある。



佐藤さんと普通の恋をして、普通の幸せを掴むんだ。



麻生家で過ごした日々は、とても温かい夢だった。


壱斗の笑顔も一緒に行った遊園地も、全部夢なんだ。




「おかえり…おかえり!」



私を見てお母さんは少し驚いたけれど、何かを察したのか私を抱き締めてくれた。



ごめんねごめんねって、鼻を啜る音が聞こえる。




「これじゃ、どっちが娘かわかんないよ」



母の頭を撫でながら、苦笑いした。




家族の皆様に何も挨拶してこなかったけど、壱斗が何とかしてくれてるだろう。



……最後まで壱斗に頼りきっちゃってるな。




壱斗にはもっとふさわしい女の子がいる。





だから私も、ふさわしい人と恋をするの。



壱斗は完璧で


私には、もったいなさすぎる人だよ………




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