Sweet*Princess
久しぶりの自分の部屋に、久しぶりの自分のベッド。
やっぱり一番落ち着く。
ベッドに座って空を眺めていると、携帯が鳴った。
「…佐藤さんだ」
“今日は楽しかったよ!お兄さんに会ってちょっと気まずかったけど(笑)また遊ぼうね!”
お兄さん、か……
どうして壱斗は“兄です”って言ったんだろう。
婚約者って言ったら、佐藤さんとうまく行かなくなるから?
……どこまで優しいんだろう。
私を思ってしてくれてることなんだろうけど
なぜか息苦しくなった。
………もう、壱斗のことは考えるのやめるって決めたんだった。
“はい!また誘ってくださいね♪”
そうメールを送って、ベッドに入った。
私のベッドは、壱斗のベッドに比べれば固い。
やっぱりあれは上等なベッドだったんだろうな…
寝心地悪いなぁ……
「っく…うぇ…ッ」
本当はわかってるんだ。
ベッドのせいなんかにしてるけど。
本当は、壱斗がいないから安心できない。
壱斗は一度も私に背を向けて眠ることはなかった。
いつも私のほうを向いて、眠るまで手を握ったり頭を撫でてくれたり。
温かい夢だった、なんて思えない。
今も思い出せるよ、壱斗の手の温もり。
手を離したのは私。
壱斗を傷付けたのは私。
戻りたくてももう、戻れない……
*