Sweet*Princess
「“戻ってきて”なんて言わないわ。ただ、もう一度考えてやって、あの子のことも」
テーブルの上に置いた私の手に、お母様の温かい手が重なる。
壱斗の手を思い出した。
細長い綺麗な指。
大きな手の平。
温かくて、とても優しい手……
「私、そろそろ帰るわ。ごめんなさいね、自分の話ばかり」
「うぅんッ……聞けてよかったです」
彼女は優しい笑みを残して
去って行った………
本当は初めからずっとわかっていた気がする。
認めようとしなかっただけで
私の心の中にはいつも、壱斗がいた。
認めてしまったら、後戻りはできない。
もう、壱斗しか見えなくなる。
釣り合わないって、辛い思いばかりする。
私は壱斗からだけじゃなく、自分の気持ちからも逃げていたんだ。
あの人はそんな弱い私も受け止めようと、いつも優しさで包み込んでくれた。
自分の気持ちを伝えよう。
フラれても仕方ない。
傷付けたのは私なんだから。
佐藤さんにも、もう会わないってちゃんと言おう。
もう、壱斗と向き合うことから逃げない……
*