Sweet*Princess

2*大切なモノ



最近、姫乃に会ってない。


避けられてるのかな?



屋上のフェンスに背を預けて座り込む。


……部活行かないとなぁ。



「壱斗。部活さぼってんじゃないわよ」


「ハハ。ごめん」



美園は寂しそうに笑って、隣に来た。




「姫乃がさ……、家出てったよ」


「嘘…なんで?!」


「“好きな人”に会えたんだって」


「……どういうこと?」




ふと校門を見れば、姫乃の姿。


周りがぼやけるくらい、彼女しか見えなかった。


今も、これからも、きっとそうだ。


“あの日”から


俺の、生活の中心は彼女だった。




彼女が戻ってくるわけがない。


今もほら、隣にいるのはあの男。



「“事故の時に抱き締めてくれた人”。今一緒にいる人」


二人を指差すと美園も二人を見た。



美園の目が、驚きに満ちていく。




「なんで、抱き締めた人って…」


「なんでかはわからないけど。」


「抱き締めてたのあの人じゃないじゃない…!なんで本当のこと言わないの?!」



俺の代わりに泣いてくれる美園に感謝した。



俺が泣いたら、姫乃は傷付くだろうから。



*
< 82 / 231 >

この作品をシェア

pagetop