Sweet*Princess
「今姫乃が好きなのは……あの人なんだよ」
過去の事実がどうであっても、今姫乃の隣にいるのは俺じゃない。
それが現実。
「壱斗……」
「ハハ。泣くなよ、美園ー」
「だって、だってあんた不器用すぎるよ……」
「そうかな?」
「そうだよー、バカ、アホ、マヌケー」
何の暴言だよって言って笑った。
俺、ほんと笑うことしかできないな。
でも俺が笑ったら
姫乃は嬉しそうな顔をするんだ。
その顔を見る度に俺は嬉しくなって、また笑う。
俺の行動の理由は姫乃なんだと
改めて実感した。
「姫乃ちゃんのこと好き?」
「うん、好きだよ」
「じゃぁ、私が守ってあげるね。あんたのファンから」
「ハハ。ファンなんて美園だけで充分だよ。他にいんの?」
「私は認めてないけどね、自称壱斗ファンはいっぱいいるの」
「へー。物好きいっぱいいるんだね」
「……あんた、ほんとにバカ?」
「は?!」
「ハハ。姫乃ちゃんは私に任せなさい」
「うん、よろしく」
去って行く美園に手を振った。
校門のほうを向くと姫乃はもういなくて、ホッとため息をついた。
*