Sweet*Princess
「姫ちゃん!」
校門に佐藤さんが立って、手招きしている。
彼に向かって、笑いながら手を振ったけど
ちゃんと笑えた自信はない。
「この間、ちゃんと帰れた?今日はバイトないからいっぱい遊ぼうね」
優しく微笑む佐藤さんから目を逸らして
ふと校舎を振り返ると
屋上に座り込む人がいた。
「……壱斗」
「ん?何?」
無意識に呟いた名前。
身体がその名前に反応して
息苦しいほど熱くなった。
「何でもないです」
急いで首をブンブン振っても
意識はすべて後ろにあった。
「行こうか」
「はいッ」
私の斜め一歩前を歩く佐藤さん。
遊園地での壱斗を思い出した。
“手繋いでいい?”
“だって姫乃可愛いんだもん”
“俺が姫乃と二人きりになりたかっただけ”
頭に浮かぶのは幸せな言葉ばかり。
釣り合うとか釣り合わないとか関係ない。
壱斗が傍にいてくれるだけで
壱斗が動いたり、何か話したりするだけで
幸せを感じることができることに
今更気付いたんだ。
*