Sweet*Princess


「今日ゲーセン行こうよ。なんか欲しいものあげよう」


俺、UFOキャッチャー得意なんだ。って佐藤さんは笑う。



こんなことしてる場合じゃない。


佐藤さんにもう会えないって言わないと。




「あの、佐藤さ…」


「姫乃ちゃん?」



意を決して佐藤さんに話しかけようとした時

誰かの声が重なった。



「俺のこと覚えてない?」


あの遊園地で


あの優しい思い出の場所で


会った、壱斗のお友達。



「藤堂、さん……」


「覚えててくれたんだ。尚でいいよ」



笑い方が優しくて、温かい印象の尚先輩は

佐藤さんに気付くと笑顔を少し陰らせた。




「誰?」


佐藤さんが隣で呟く。



「あの…えと、」


「兄貴の友達です」



尚先輩は柔らかい笑顔。



“兄貴”



尚先輩は、壱斗から話を聞いているんだ。



自分の弱さが恥ずかしい。



「……て言うべきなのかも知れないけど。ごめんな、姫乃ちゃん。俺には無理だよ。俺、壱斗の親友だから」



見上げた尚先輩は、相変わらず柔らかい笑顔だった。



その笑顔がだんだん滲んでくる。



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