Sweet*Princess


「え?姫乃ちゃん、どしたの?」


私の涙に気付いた佐藤さんは戸惑っている。


止めたくても、止められない。



「壱斗は、待ってるよ」



尚先輩が、優しく呟いた言葉。



その短い言葉に、全てが詰まってる。



私の幸せも


壱斗の気持ちも


二人の未来も



それだけが、私の全てなんだ。




想うだけで涙が出るのに



忘れられるわけないじゃない。




「壱斗が、好きなんだろ?」


強く、確信に満ちた尚先輩の言葉は


私の心の奥深く


今まで気付くことができなかった壱斗へのすべての想いを引き出した。




「ごめんなさ……私、壱斗が好きです…ッ」



尚先輩が私の頭を優しく撫でてくれる。


隣にいる佐藤さんは動かずじっと立っているだけで


どんな顔をしているのか、見るのも怖かった。




「壱斗のところ、行こうか姫乃ちゃん」


私は尚先輩に引っ張られて、着いて行くことしかできなくて


ただただ涙を流し続けた。




「待って、姫乃ちゃん。俺、言わなきゃいけないことがあって…」


やっと口を開いた佐藤さんは、少し悲しそうだった。


私もいっぱい、話さなければいけないことがある。


いっぱい謝らなければいけないことがある。



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