Sweet*Princess
「絶対、壱斗のところに気持ち伝えに行きます。だから、少し佐藤さんと話させてください」
「………うん」
振り返って佐藤さんの方へ行こうとした瞬間
尚先輩が腕を引っ張って耳元で囁いた。
…………え?
嘘でしょう?
尚先輩の足音が遠ざかる。
佐藤さんを見ると
佐藤さんは少し苦笑した。
「聞いちゃったみたいだね。」
まるで身体の全神経が耳に集まっているかのよう。
騒がしい街の音が遠くに聞こえる。
「場所変えようよ。どこか座ろう」
佐藤さんの背中を追って早足で歩く。
その間も頭にあるのはさっきの尚先輩の言葉ばかり。
“事故の日君を抱き締めてたのはこの男じゃない。
壱斗だよ”
佐藤さんは人気のない公園に入ると、適当なベンチに座った。
「騙そうと思ったわけじゃないんだ。ただ本当のことを言ったら君が離れていきそうで。まぁ、結局こういう結果になったんだけど」
苦笑いする佐藤さん。
私は初めから
壱斗と話す前から
壱斗に恋していたんだ。
*