この力があるかぎり
「こっちからいかせてもらうぞ。」
そう言うや否や、ヒヨリさんは自分の手を体の前に出し、手のひらを上に向けた。
「WC(ウィンドチェイン)」
今の一言で、ヒヨリさんの手に長さ50㎝ぐらいの、風でできた細長い鎖のようなものが出てきた。
細いながらも風の圧力などはかなりのものだろう。
そして、それを私の足に向けて放った。
なるほど…風の鎖を作って私の足を使わせなくして、身動きがとれないようにするためか…それなら…
「HS(ハードソイル)」
私は、自分の身長ぐらいある、固い土でできた盾を出した。
向こうが風の能力なら普通は土は弱い。
けれど、固い土を形成すれば立派な盾になる。
風の鎖がこちらに向かってきたとたん…
シュン―――
小さな音を立て、風の鎖は形を維持できなくなり静かに消えた。