この力があるかぎり



伊織さんの音とは違い、小さく的を貫いた銃弾はそのまま的の奥に消えていった。


「よし。では着弾点を確認するためにもう少し近寄るぞ。」


そう言いながら的の方に向かう伊織さんについていき、だんだんと銃痕がはっきりと見えてきた。


あ…イメージしてた所と少しずれている。


本当は、もう少し真ん中の方を狙っていたんだけれど、中心部分から見て右側の方に黒い銃痕がついていた。


「これは…威力はこの程度で大丈夫だが、軌道と着弾点がまずいな。」


「…やっぱりあまり正確ではないからですか?」


「いや、そうではない。位置的にまずいと言っているのだ。そもそも私は美紀の定めていた方向を詳しくは知らない。」


そう言われると…そうか、確かに伊織さんには着弾点などのことを伝えてないし、方向なども私の指の向きを見て知ったはず。


だとしたら一番問題なのは…


「銃痕の位置が人の急所に当たっていることですか?」


そう…一番気にしなければ行けないのはこれは訓練だということ。


しかもこれは闇の組織とかではなく、きちんとした組織なのだから、人の急所は極力外さなければいけないはず。


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