私は男を見る目がないらしい。
 

高校3年の時のクラスメートの顔を出席番号順にぱらぱらと本をめくるようにして頭の中で思い返してみるけど……いや、こんなイケメンはいなかった……はず。

いたら、さすがに覚えてるだろうし。

でも、ここにいるってことは、同じクラスだったってことだよね……?

じーっとその顔を見てみるけど、やっぱり思い出せない。

記憶をどこかに落としてきたんだろうか?と思ってしまうほど、これっぽっちも思い出せないのだ。

香代子が私の袖をつんっと引いてきて、私は香代子が思い出してくれたのかもしれないと少しの期待を抱いて、耳を傾けた。


「……ねぇ、みお。この人、誰だっけ?」

「……はぁ。その言葉、そのまま返すよ……」


期待は一瞬にして崩れ去った。

香代子も思い返していたらしいけど、私と同じで思い出せなかったようだ。

二人とも思い出せないのはさすがにその人に酷い気がして、罪悪感がじわじわと襲ってくる。

……誰?

この人は、誰だ?

 
< 10 / 278 >

この作品をシェア

pagetop