私は男を見る目がないらしい。
 



「……ケホッ……」


部屋に射し込む太陽の光で、私は目を覚ました。

……身体が痛い。

目も、喉も痛い。

私は泣きながら、いつの間にかソファで寝てしまっていたらしい。

いつもはしばらく言うことを聞いてくれず起き上がらない身体が、今日は珍しく言うことを聞いてくれる。

私はむくりと身体を起こし、部屋を見渡す。

物音1つせず、シンとしている。

……3ヶ月前までと同じ光景がそこには広がっていた。


「朔太郎……?」


ここにいるはずの存在の名前を呼ぶ。

でも、『何だよ、美桜』……その声は返ってこない。

この3ヶ月間が夢だったかのような感覚がした。

……夢だったんだろうか?

それとも、朔太郎のいない今が、夢?

……現実はどこ?

……ブーブーブーッ


「!!」


突然響いた携帯のバイブに私はビクン!と反応した。

朔太郎かもしれない!と思ったから。

ローテーブルに置かれた携帯を震える手でサッと取り、待受画面を表示する。

新着メールの知らせが来ていて開くと……画面に表示されたのはお気に入りの洋服屋さんのメルマガだった。

するりと私の手から携帯が離れ、私の足の甲にガツンと当たった後、床にゴトンと落ちた。

足に鈍い痛みが走る。

その痛さが、これは現実なんだ、と私に告げた。


「っ、う……っ」


あんなに涙を流したのに、また溢れだした。

足の痛さのせいじゃない。

この胸の痛さのせいだ。

 
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