私は男を見る目がないらしい。
……ここ2週間で完全に定番化してきた光景。
1ヶ月前は三浦さんに噛み付く気持ちの余裕もなくて、ただ渡された仕事を受け取ってこなすだけだった。
だからこの光景は、私が元気になった証拠でもあった。
「まぁまぁ、今日はその辺りにしようか」といつものように、くすくすと笑いながら先輩の田仲(たなか)さんが割り込んできた時、ガチャっと部屋のドアが勢いよく開いた。
みんな一斉にドアの方を振り向くと。
「あら、やだ。元気そうじゃない」
始業時間すぐ、珍しくひょっこりと理子さんが現れた。
それと同時に三浦さんが少しだけ後ずさったのが見えた。
「あっ、理子さん!?酷いですよーっ!ずっと電話にも出てくれないとか!直接営業部に行っても何故か門前払いされて取り次いでもらえないし!三浦さんに言った言葉を今すぐ撤回してくださいっ!」
私は相手が理子さんであっても、言いたいことは言えるんだから!と、理子さんにずんずんと近寄っていって噛み付いた。
すると、理子さんは冷静な表情で私の顔を覗き込んで、「うーん」と口に手を当てた。
しばらく考えた後、ゆっくりと口を開く。
「そうねぇ……うん。表情も前と同じに戻ってるし、それだけ言えれば十分ね。三浦さん、美桜イジメはもういいです」
「!そ、それは……助かるよ……はぁ~」
理子さんの言葉に、本気でホッとした表情を浮かべ、三浦さんが胸を撫で下ろした。