私は男を見る目がないらしい。
「じゃあ、すみませんが……」と言いながら私にそっと近寄ってきた三浦さんが私の手からそっと資料を取り上げ、他の人たちに資料を分け始める。
私はというと、理子さんの手に腕をぐいっと引かれてバランスを崩していた。
「わぁ!?」
「美桜、今日は付き合いなさい」
「え?あ、はぁ。いいですけど……仕事が忙しいのはもう終わったんですか?忙しかったのは本当ですよね?」
「ものっすごく忙しかったわ。でも昨日やっと一段落したの。今回は美桜のせいで気が散るし、相手は強情だし、本当に大変だった!」
「えぇ!?何で私のせいなんですかっ」
「だから、今日はとことん付き合ってもらうわ。もちろん、美桜の奢りだからね」
「“だから”と“もちろん”、の意味がわかりませんってば~」
「6時に下に集合!時間厳守!三浦さん、今日は美桜の残業は禁止でお願いしますね!」
「はっ、はいっ!」
突然理子さんの言葉が自分に向いて驚いた三浦さんは、資料を配る手をびくっと止めて、その場でしゃきっと直立した。
そんな三浦さんに、理子さんはさらに言葉を投げる。
「それと!三浦さんも!今日からはちゃんと早く帰ってください」
「っ!あ、あの……?一体何を……」
三浦さんがへらっと笑って首を傾げると、理子さんが大袈裟すぎるくらいの息をついた。