私は男を見る目がないらしい。
「三浦さんのことだから、どうせ美桜を一人で残せないって自分も一緒に残業してたんでしょう?しかも、あたしが渡せって言った案件の半分は三浦さんがやってたの、気付いてましたからね?見え見えですから」
「え?三浦さん、それ本当ですか?……確かに……、三浦さんも最近遅かった気はしますけど」
「いや~……、そういうわけじゃないよ。ほら、俺も自分の仕事抱えてたし……それだけだから。ね?」
「ま、三浦さんの人の良さは今に始まったことじゃないものね。じゃあ美桜、遅刻厳禁よっ!?」
「え、理子さ……っ」
理子さんは言うだけ言って、バタン!と部屋を出ていってしまう。
いつも以上に嵐みたいな人だ……!と思ったのは私だけじゃないようで……みんなで顔を合わせてぷっと苦笑してしまった。
とりあえず理子さんのことは置いておいて……今は三浦さんだ。
私は資料を配り終わった三浦さんに歩み寄る。
「三浦さん」
「え?あー……、相原さんのことすっかり忘れて、案件全部配っちゃったから……、今日はデータのまとめとか論文でも読んでてくれれば」
「ありがとうございました」
「え?」
「ご心配お掛けした上に、まさか私に付き合って三浦さんも残っててくれたなんて」
「!いやいや、本当に俺は何も……」
三浦さんがへらっと笑って手を左右に振るけど、わずかに見える困惑した表情が何よりの証拠だ。
というか、私のせいで残業していたなんて……奥さんにも悪すぎる。
まだ新婚さんなのに。