私は男を見る目がないらしい。
「ねぇ、朔!……」
考えようとした時、その姿にぴったりのかわいい声が朔太郎の名前を呼んだのが耳に入ってきて、びくっと身体が跳ねてしまう。
彼女は私がいる方向とは逆方向を指差し、朔太郎の腕をくいっと引っ張るようにして、歩き始める。
朔太郎も仕方ないな、という柔らかい笑顔を浮かべて、彼女に引かれるままに歩いていく。
そして、あっという間に人並みの中に消えていってしまった。
どんっと右肩に衝撃を感じ、私はそのままふらりとすぐ傍にあった店の壁に背中をぶつけた。
……また同じ人が私たちの別れの原因なの?
しかも、今回は朔太郎自ら私を捨てて、彼女の元に?
「……何なの……もう」
ガクリとうなだれそうになった時、もしかして、と私の頭の中にある予想が浮かんだ。
高校の頃から、ううん、もっと前からずっと彼女のことを好きだったけど振り向いてもらなくて、仕方なく私と付き合ってたのかもしれない。
……私と彼女の名前が、同じ“みお”だという理由だけで。
私はずっと、あの“みおさん”の代わりだった。
同じ名前の私と付き合うことで、“みお”さんと私を重ねて……私に呼びかける“みお”は、朔太郎の中では彼女のことだったんだ。
“本当のみおさん”にやっと振り向いてもらえたのだろうか?
長年の想いが叶ったから、身代わりだった“偽者のみお”を捨てて、“本当のみお”のところに行ってしまったの?