私は男を見る目がないらしい。
 

オクトーバーフェストは有名なドイツビールを始め、いろんな国のビールを飲むことができる祭りだ。

そこにはソーセージや生ハムなどのビールに合う食べ物も揃っていて、いろんな催しもあって、すごく楽しい場で毎年楽しみにしているイベントなんだ。

10月が近付くと、テンションも徐々に上がっていく。

毎年、理子さんと都合の合う日を決めて、会社の人を何人か誘って行くのが定番になっている。


「すごく楽しいですよね!いろんな人がいて」

「そうそう。去年は年配のグループに混ざって飲んだりもしましたよ。話がすごくおもしろくて、時間が過ぎるのがあっという間だったなぁ」

「わ、それすごく楽しそうですね!」

「はい。毎年楽しくて満足するんですけど、一昨年だったかなぁ。今となっては笑い話にできるんですけど、散々なこともありました」

「散々って、一体何が……」


苦笑する長谷部さんに尋ねる。


「その日は見事に厄日だったみたいで、物はなくすし、コンタクトは落とすし、仕事の資料は消えるしで、小さい災難が重なって大変な一日だったんです。折角のオクトーバーフェストの日だったのに、疲れた一日だったのを覚えてます。とは言っても、終わってしまえば楽しかったのは楽しかったんですけどね」

「ふふっ、そうなんですね」

「毎年あるでしょう?サンバ隊みたいなのが」

「あぁ!ありますあります!私、混ざったことあります!」

「あれ、相原さんもですか?」

「え、長谷部さんも?」


すごく落ち着いた雰囲気の長谷部さんがあのサンバ隊に混ざっている姿を想像するのはなかなかできなかった。

 
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