私は男を見る目がないらしい。
「……そっかぁ。あ、これも何かの縁だし、今度お礼させてもらえませんか?ずっときちんとお礼ができなかったことが心残りで、去年も実は会場で探していて。ご飯にでも行きましょう。おごらせていただきますから」
「へ?いえいえ、そんなお礼されるようなことしてませんからっ!お気遣いなく!」
「いや、俺の気が済みませんから。あの万年筆のおかげで、あの後も仕事が順調なんです。だからぜひお礼させてください」
「えっと……でも」
「ご迷惑ですか?」
「あ、そういう意味じゃなくて……」
「じゃあ、ぜひお願いします」
ぺこりと頭を下げられて頼まれてしまうと、逆に申し訳なくなってしまう。
ここまで言ってくれるなら、と私は頷いた。
「じゃあ……お言葉に甘えて。私、ビールが飲めれば幸せなので、その辺の安い居酒屋とかで大丈夫ですから」
「くくっ、なるほど。じゃあ、ビールの美味しい店、探しておきますね」
「はい」
その後、長谷部さんと連絡先を交換し、「近いうちに連絡しますね」と目尻に皺を寄せた笑顔で言われたけど、お酒も入っているし、きっと社交辞令だろうと私はあまり期待はしないようにした。
でも、その笑顔にほんの少しだけ私の中に温かい気持ちが生まれた気がして。
この気持ちは何だろうと気になりつつもその時は特に深く考えないまま、その合コンはお開きになり、一緒に飲んでいたメンバーとは別れた。
思っていた以上に楽しむことができて、連れてきてくれた理子さんにちょっとだけ感謝した。
……ちなみに、理子さんはしっかりとイケメン美容師をお持ち帰りしていた。
やっぱり、理子さんって凄い。