私は男を見る目がないらしい。
その時、朔太郎からふわりとコロンの香りがすることに気付いた。
決して鼻につくものではなくて、私好みの香りで……朔太郎にぴったりだと思った。
こんな香りをさせるなんて、はじめて知った。
……って、そんなこと思ってる場合じゃない。
私は朔太郎の顔を見上げる。
「……一体どういうつもり?」
「どういうつもりって、何が?俺は純粋にこの会社の製品について勉強したいだけだけど?これからどんな製品が生まれるのかとかもね」
「……それなら別に私じゃなくてもいいよね?私、ただの分析屋で開発する側じゃないんだし、開発側に聞いた方がいいと思うんだけど」
「って言ってもなー。ほら田仲さんのお墨付きだろ?せっかくオススメしてもらって了解も得たのに断るのも悪いし、“相原さん”は仕事もできるみたいだし?新人の俺にとっては結構いい話ではあるんだよなー。それに、分析屋が一番製品のことを知ってると思うんだけど。違う?」
「!それは……っ」
正当な言葉を言われて、私は言葉に詰まってしまう。
「何時間も付き合えって言ってるわけじゃないんだし、いいじゃん」
「ぜんっぜん、良くないから!私だって忙しいの!」
「忙しいのは他の人だってそうだろ?それにさぁ……俺、“相原さん”に教えてもらいたいし」
「っ!」
何それ!?どういう意味!?
そこに何か意味が含まれている気がして、朔太郎を見上げると、意地悪な笑いを浮かべて私を見ていた。