私は男を見る目がないらしい。
「……途中になったのは誰のせいよ。あんたのせいでしょ?」
「仕方ないだろ?取引先からの呼び出しだったんだし。俺も夜に呼び出すのはやめてほしいって思ってるけど、客に向かってそうも言えねぇだろ」
「……」
正当すぎる理由を言われて、私はハァとため息をつくしかなかった。
中途で入社してきて2ヶ月も経っていないというのに、朔太郎はすでにいくつもの顧客を持っているらしいということは、風の噂で聞いた。
しかも、新規の顧客を私の同期でもある5年目の社員よりも多く取ってきているらしく、早くも社内で話題になっているそうだ。
そして……営業部では朔太郎が夕方にここに入り浸っていることも有名になってしまっているらしい。
期待の新人!なんて言われているらしいけど、私はそんな言葉は信じていなかった。
飲み込みは確かに早いとは思うけど、こんなやつがそんなに業績がいいわけない。
どうせ、ビギナーズラック。最初だけだ。
「……後30分。待つなら教える」
「……いいよ。りょーかい。仕事、頑張って」
「っ!?」
突然、朔太郎の手が私の頭をくしゃりと撫でてきて、ドキン!という心臓の高鳴りと共に、ビクッと身体が跳ねてしまった。
はっと振り向いた時にはもうそこには朔太郎はいなくて。
私の戸惑いだけが、そこに佇んでいた。