私は男を見る目がないらしい。
「……来週の火曜日の昼。定例会議があるから、その時に時間を取ろう。うちに足を運んでくれないか?他の人間にも聞いてもらおう」
「本当ですか!?」
「……ただし。全員が首を横に振った時は……わかっているね?」
「!……はい。でも、ここで断ち切られるのでなければ、まだ光は消えてないと思ってますから。諦めません」
「ははっ。それでこそ小西くんだね。じゃあ、待っているよ」
「はい!ありがとうございます!よろしくお願いします!」
深くお辞儀をした後に顔を上げた朔太郎の顔にふわっと浮かんだのは、すごく嬉しそうな笑顔だった。
私は不覚にもドキッと心臓が跳ねてしまった。
朔太郎の笑顔につられたのか男性も柔らかく笑い、朔太郎に向かって手を上げて、入り口付近にいた私の方に向かってくる。
私は慌てて平静を装って歩き始め、男性とすれ違った。
ちらっと朔太郎に目を向けると真剣な表情で男性の後姿を見送っていて、私のことは全く見ていない。
いつもは見せない“仕事モード”の表情。
それは私の心臓の鼓動をドキドキと加速させた。
……目が離せなかった。
あんな表情するんだ……。
もっとへらへらと営業スマイルを浮かべて営業の仕事をしているんだと思ってたのに。