私は男を見る目がないらしい。
 

その時、ふと朔太郎の目線が入り口から私の方に移った。


「っ!」


朔太郎の口元が動いた気がしたけど、何だか気まずくて朔太郎からさっと目を離し、エレベーターに早足で向かい始める。

やだ。

私、何で朔太郎に見惚れてるの?

おかしい……こんなにドキドキするなんて。

……いや、違うよ。

ちょっと見慣れない姿だったから、戸惑っているだけ。

……それだけのはずだ。

私は強く言い聞かせながらエレベーターの前に到着したけど、エレベータは2機とも上に行ってしまっていた。

私は▲のボタンを押し、10階から下に向かって下がり始めたエレベーターの階数表示を、早くエレベーターが来てくれないかなと思いながら見つめる。

早く。早く。

……朔太郎が来る前に、早く。

 
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