私は男を見る目がないらしい。
 

「……あーあ。まさか見られてるなんてな。焦った」

「!」


後ろから聞こえてきた声は紛れもなく朔太郎のものだ。

さっきとは違ってホッとしたような声色に私は振り向けなかった。

……自分がどんな顔してるかわからなかったから。

朔太郎のことを見た時に、どんな顔してしまうかわからなかったから。

……追いつくの、早いよ。


「いや、でも。居てくれて良かった」

「……え?」

「ん?いや、だから……力くれて、ありがとう」

「!」


思わぬ言葉に、私は振り返って朔太郎のことを見る。

すると、朔太郎はいひっと少し照れくさそうに笑顔を私に向けた。

何でお礼なんて……?


「かなり苦戦してる病院でさ。美桜に出してもらった資料と……さっきの美桜の姿で何とか次に繋げた。ありがとな?」

「いや、お礼言われても……。私何もしてないし」

「してるって」

「……?」

「……美桜は自分を低く見すぎなんだよ。すっげぇ力になってるから。……あ、エレベーター来た」


朔太郎は先に乗り込み、ドアを開けてくれている。

私は朔太郎の突然の言葉に足が動かず、そこにたたずんで、朔太郎のことを見てしまっていた。

 
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