私は男を見る目がないらしい。
「何してんの?早く乗れって」
「!わ、わかってるし」
私がエレベーターに乗り込むと、すでに押された私のいる部屋がある7階と営業部がある11階のボタンに加え、朔太郎が押した閉じるボタンがオレンジに光った。
パタン、とエレベーターの扉が閉まった。
……密空間。
その中に私の鼓動が響いてしまうんじゃないかと言うくらい、静かで。
それがまた、私の鼓動を速くしていく。
……心臓の音、聞こえてないよね?
どうしても気になって不安になった私は口を開く。
……そしてつい、本音をポロリとこぼしてしまった。
「……ちょ、ちょっとだけ……見直した」
「ん?何それ?」
「や……何となく、へらへらしながら営業してるのかなってイメージがあったから……。でも違ったんだね。……何か、カッコ良く見えた……かもしれない」
「!……」
思わず出てしまった私の言葉に朔太郎は何も言わず、ぷいと私からエレベーターの操作盤に顔を背けた。
そして、私もその言葉の重大さに気付いた。
……っていうか、私、何言ってるの!?
かっこいいとか……っ!
バカじゃないのっ?