私は男を見る目がないらしい。
発してしまった言葉を心から後悔していると、エレベーターが7階に到着する時が近いらしく、エレベーターのスピードが落ちるのを身体で感じた。
その時、ポツリと朔太郎から言葉が出た。
「……はぁもう。そんなこと言われたら、照れる」
「!」
「でも……、超嬉しい」
ドアが開くと共に、朔太郎の嬉しそうな笑顔が私に向き、私の心臓が大きく跳ねた。
「っ!」
「ありがとな。頑張るから」
「……っ、お疲れ様っ」
私は朔太郎の言葉と笑顔を振り切るようにして吐き捨てるように挨拶し、朔太郎に背を向けてエレベーターを降りた。
エレベーターの扉が閉まるまで、背中に朔太郎の視線を強く感じていた。
……痛いくらいの視線を。
……そして、そのほんの数分の出来事だけで、私の気持ちがまだ朔太郎にあることを再確認してしまったのだった。