私は男を見る目がないらしい。
「お守りにしてたんだ。離れていても、美桜を感じていたくて。ちゃんと返すつもりだった。……受け取って」
「……!そんなの、いらないっ」
「美桜のだろ?もうお守りはいらないし、返す」
「ちょ……っ」
受け取ろうとしない私に、朔太郎は私のコートのポケットに小さな封筒を突っ込んだ。
「あ、あと、美桜が気にしてるあいつ……住岡って言うんだけど、俺じゃなくて兄貴のことが好きなんだよ。住岡は小さい頃からずっと兄貴のことしか見てなかったし、俺も女として見たことなんて一度もねぇし」
「……そんなのどうとでも言えるじゃない。あんなに仲良さそうに腕組んで……何もないなんて言われても説得力ない」
「逆だって。意識なんてしてないから、簡単に触れられるんだよ。ていうか、兄妹みたいなもんだし」
「……」
「住岡のことはそういうこと。美桜が会うなって言うなら、もう会わないから。気にさせてたことは謝る。ごめん」
ぺこっと頭を下げる朔太郎の姿を私は呆然と見るだけだ。
「12月半ばに仕事決まって、落ち着いたらちゃんと美桜を迎えにいこうって思ってた。なのに、まさか美桜が同じ会社にいるとは思わなかったし、初日から美桜に会うし、俺の計画が一気に崩れた」
「……」
「しかも思いっきり拒否されるだろ?ほんとに目の前が真っ暗になった気がした。離れたのは失敗だったって。でも、同じ会社にいるならそれを使う手はないし作戦変更して、毎日美桜に会って俺のことでいっぱいにしようって思った。俺のことを拒否するのは美桜が素直になれないでいるだけだって思ったから、頑張ればまたすぐに元に戻れるって信じてたのに……好きなやつができそうとか言われて焦るしムカつくしで、制御できなかった」
……前だったら簡単に信じてたと思う。
でも、逆に話ができすぎてて、今の私には信じることなんてできなかった。