私は男を見る目がないらしい。
「あ、営業の人間が言ってましたけど、小西くん、最近さらにハンパないらしいですよ」
「ハンパない?って何が?」
「新規のユーザー獲得数です。医療系にガツガツ突っ込んでいってるらしくて」
「医療系?」
「それがうちの前はシトラスメディスンにいたらしくて」
「え、シトメディって、外資系の医薬品会社だよね?小西くん、すごいところにいたんだ……」
「前の会社で培った人脈のおかげもあるんだろうって言ってましたけど、俺の予想では相原さんに教えてもらった知識があるっていうのも強いんだと思うんだよなぁ。化学物質のこともしきりに聞いてたし」
「!」
「じゃあ、小西くんの活躍の裏には相原さんあり!って感じか~」
三浦さんと田仲さんが楽しそうに話すけど、私は笑えないでいた。
からかう道具だけじゃなくて“踏み台”でもあったのかもしれないな、と頭をよぎったから。
はぁ。もう考えない、考えない。
「三浦さん、これ、全部引き受けます」
「え?でも、かなり量あるけど」
「大丈夫です。小西くんが来なくなって負担もなくなりましたし、どちらにしろ複数人で作業しても纏めるのが面倒そうですから」
「……そう?なら任せようかな。ありがとう」
「いえ」
プライベートのことを忘れたくて仕事に逃げるのはズルイのかもしれないけど、私はそうすることしかできない。
これが私のやり方なんだ。